さえずるキウイズム

一児の父が大人になるため考えたことや子育て、健康についてピーピーさえずっています。

落合博満「采配」について熱い思いを語りたい

本日は野球関連の書籍の紹介をしたいと思います。

正直、紹介というよりは熱い思いを語りたいだけになっていることをお許しください。

 

落合博満「采配」

 

この本とは長い付き合いです。会社で管理職をまかされたタイミングでたまたま出会いました。

はじめての管理職。なにも分からなかった自分自身を支えてくれた思い入れの深い一冊でもあります。

 

著者:落合博満とは?

著者はプロ野球ファンにとっては説明不要の人物でありますが、野球にはあまり詳しくない方のために簡単に説明します。

 

経歴

1979-1998 プロ野球選手(ロッテ→中日→巨人→日本ハム) 

1999-2003   野球解説者

2004-2011   中日ドラゴンズ監督

2013-2017   中日ドラゴンズゼネラルマネージャー

 

選手時代のトピックス

・史上初となる3回の3冠王*1を獲得

・日本プロ野球選手史上初の1億円プレイヤーとなる*2

・FA宣言*3を初めて行った

 

*1 その年の打率、本塁打、打点の3部門でトップをとること。めちゃくちゃ難しい。

*2 現在は年棒1億円を超える選手は多数いるが、その礎を築いたとされる。

*3 FA(フリーエージェント)宣言 8年同じチームにいれば、他の球団に移籍できる。しかし手を上げる球団が無ければ無職になってしまうリスクもある。

 

監督時代のトピックス

・8年間でリーグ優勝4回、日本一1回

・球団史上初の連覇(2010,2011年)を達成

 

選手としても監督としても圧倒的な実績を残してきた落合氏ですが、氏を表す代名詞として欠かせないのが「オレ流」という言葉です。

 

25歳でのプロ野球入りなど他の野球エリートと一線を画するエピソードを持ち、選手時代の練習方法や監督としての采配など既存の常識や周りの言葉にとらわれず自分の信じた道を歩んできた人物です。

 

「采配」はビジネスパーソン必見の一冊

本書は中日ドラゴンズ監督を退任した2011年に出版されました。

落合氏の人や組織を動かすための手法や哲学を、「強いドラゴンズ」を作り上げていく過程の描写とともに語っています。

プロ野球の事例ではありますが、ビジネスの世界でも通用する普遍性が高い内容となっています。ドラゴンズファンのみならずビジネスパーソンにぜひ読んで欲しいなと思います。私も仕事をする上でこの一冊に強く影響を受けております。

 

全6章からなる本書ですが、それぞれの章から自分が感銘を受けた部分を少しずつ紹介していきます。

 

 

1章「自分で育つ人になる」 

~「心技体」ではなく「体技心」~

人間の成長のための要素として「心・技・体」がありますが、重要な順にならべると「体・技・心」であると落合氏は言っています。

 

 

体力があり、技術がある人間は心を病まないという考え方には私も大きく同意で、何か悩みが出たときは

体力面(睡眠、食生活、運動)

技術面(スキル、勉強量)

の順で見直すようになりました。

 

 

心とは体という土台の上で発揮されるものです。心だけに頼って頑張り続けるのはなかなか難しいことを実感しています。

 

 

2章 勝つということ 

~「負けない努力」が勝ちにつながる~ 

0対1での敗戦が3試合続いた時に野手陣、投手陣にそれぞれどんな言葉をかけるのか?

 

 

試合を作ったピッチャーが使う「自分の仕事はした」という言葉に対して落合氏は疑問を投げかけています。

 

 

「自分のベストを尽くしたか」と「結果が出たか」とは全くの別次元の話でそこを混合してはいけないという戒めにもなっています。

 

 

自分自身も「よく頑張った」という気持ちが強いと客観的な視点が失われてしまうことがあるので、気をつけています。

 

 

3章 どうやって才能を育て、伸ばすのか 

~欠点は、直すよりも武器にする~

投げる球が「シュート回転する」という欠点を持った投手をどのように指導するのか?

 

 

すべてにおいて完璧な人はいないのだから、欠点を長所に変える目を持つことが指導者には求められていると言っています。

 

 

仕事でも後輩を指導する場面になるとどうしても欠点ばかりが目に付き指摘しまいがちですが、そんな時は一旦落ち着いてその欠点を生かしてやれないかを考えてみてはどうでしょう。

 

 

4章 本物のリーダーとは 

~情報管理こそ監督の仕事~

個人的に落合氏の最も優れていた点は情報管理能力だと思っています。

 

 

ファンやメディアの「知りたい」という気持ちよりも、選手の重要情報(コンディションや故障など)を守りたいという監督でした。球団の親元が新聞社であったため、そのあたりのいざこざも多かったのではないかと思います。 また情報をマスコミに漏らしたコーチをクビにしたりもしています。

 

 

世の中には残念ながら大事な情報をペラペラと話してしまう人が意外と多いですね。情報があふれる時代だからこそ情報の取り扱いには十分気を遣い、「これを言ったら本人はどう思うか」という想像力を持った人が信用されていくのではないでしょうか。

 

 

5章 常勝チームの作り方 

~「初」には大きな価値がある~

選手としても、監督としても「初」の偉業を数々成し遂げてきた落合氏だからこそ、その価値を知っています。

 

 

2011年に岩瀬仁紀選手がプロ野球史上初の300Sをあげた際のマスコミの対応に苦言を呈していて、「初」の価値観を大切にすることがその世界の発展に繋がり、ひいては自分を成長させると書いています。

 

 

自分の今いる世界で先人たちが成し遂げてきたことに対して敬意を持つということを意識するきっかけとなりました。

 

 

6章 次世代リーダーの見つけ方、育て方 

~「リーダー不在の時代」ではない~

今の時代はリーダー候補者に対して昔の人と比べての評価や本業とは関係のないところでのバッシングが起きやすく、リーダーが育たない原因になっているのではないかとのこと。2011年に書かれたものですが、今もそんなに変わらないですね。

 

 

今は我慢の時代で最初から強いリーダーはいないのだから中・長期的に見ていく視点が必要とも書いています。

 

 

人の考えややり方を確認もせず批判的な立場をとるのはよくないですね。「どうせダメに決まってる」ではなく「まずはやってみよう、話はそれからだ」というスタンスを大事にしたいですね。

 

 

 

最後に

今回紹介した以外にも金言がたくさんあり、人生のヒントとなるような考え方に触れることができます。

落合氏は「人や組織を動かすこと以上に、実は自分自身を動かすことが難しい。」と本書で述べています。

 

 

「オレ流」という言葉からは独特、奇抜というイメージがされ監督としても一見奇策をとっているように思われがちですが、その実は合理的に自身の理論に基づいて自分自身を「采配」してきただけなのではないでしょうか。

 

 

我々も自分自身の人生を「采配」していく上で迷うこともあるでしょうが、そんな時に背中を押してくれる一冊です。 

 

 

最後に本書の核となる一文を引用させてもらいます。

 

 

自分の采配を「正しかったか」

それとも「間違っていたか」

という物差しで考えたことがない。

ただあるのは、

あの場面で最善と思える決断をした

ということだけである。

 ~「采配」落合博満 p74より引用~

 

 

本日はこれにて。

ありがとうございました。